一周忌
9月17日(水)
亡き夫を想って過ごす日々、
ようやく、一年が経つ。
惜別の苦しみ、深さを想うと、とても長く、
メイの成長や、日々の生活、営みを思うと
あまりにも早い。
*
今年は、涼しく心地良い初秋。
昨年の今頃は、まだまだ蒸し暑く、
汗だか涙だか、とにかくたくさんの水分が
止めどなく、溢れ出ていたことを思い出す。
昨年とはまったく違う空気。
一年経つと、目に見えるもの、目に見えないもの、
あらゆるものが変化する。
悲しみは、依然、深いところにあるけれど、
それを持ったまま、
気持ちが少しずつ少しずつ変化している。
*
メイは3歳半になり、
愛くるしい笑顔で私を毎日元気づけてくれる。
ワイルドな振る舞いをするけど、とてもとても優しい子。
楽しいことを全身で喜び、
好きなことや人に、素直に好きと言え、
「ありがとう」も「ごめんなさい」も自然に言える。
誰にでも大きな声で挨拶をし、
「ママのスカート素敵!」とか「ママ、お料理上手だね〜!」
と屈託なく私を褒めてくれさえする。
そして、音楽が大好き。
トッチャにそっくりだ。
これ以上教えることは無いか、と思うくらい、
子育ては、順調。
*
この夏は、初盆で、夫の魂を迎え、そして、送る。
まもなく、一周忌法要があり、魂を供養する。
寄居の空気の良い、山の上の、お墓を拠点に。
*
今日は、ちょうど一年。祥月命日。
トッチャの好きなビールと餃子をお供えし、
メイとヒロミで静かに過ごす。
21時43分。合掌。
“Norweigian Wood”という銘柄のお線香を焚き、
『ノルウェーの森』をBGMに。
「やるじゃん、まり子!」と声が聞こえたような。
〈rollo.11〉追悼ライブ後記
3月2日(日)
2月27日はトッチャの誕生日。
生きていれば46歳。
今年もこれまでと同じように、
ケーキを囲み、メイが「ハッピーバースデー♪トッチャ〜!」
と高らかに歌ってくれる。
メイは「トッチャ、おめでと〜う!!」と
お仏壇に向かってニコニコと言い放つ。
メイは、形が変わってしまったトッチャの存在を、
何の疑いもなく、素直に、自分のパパとして大事に抱えている。
私も、メイと一緒にいることで、
その気持ちを強く持つことができる。
私たちにとってトッチャは、いつでもどこでも、
変幻自在に一緒にいられる、お髭の生えたワイルドな妖精だ。
このままずっと、空想好きな親子でありたい。
***
夫の通夜・葬儀の時から、
ヤッサン、フッタ君、ショージ君が発起人となり
「誕生日あたりに、修ちゃんの追悼ライブやろう!」ということになっていた。
それは、実行委員(ヤッサン、フッタ君、ショージ君、DJミステイク、マスダユキ、タロウ、まり子)を中心に綿密に計画され、
度重なるいくつかの難事にもめげずに、
3月2日(日)『rollo vol.11 追悼・市川修一しばり20分1本勝負』が無事に開催された。
中心に運営してきてくれたリーダーのヤッサンが、前日に胆石がうずき始め、緊急入院となってしまったことは残念だけど、ヤッサンのためにもこのイベントを成功させようと、みな奮起した。
*
『〈rollo vol.11〉追悼・市川修一しばり 20分1本勝負』
司会:藤井君+(時々アインちゃん)/映像:SAM1
FOOD:マサラワーラー,SPICE ADDICTS
出演:スッパバンド,ヤッホーシリアス,道産子アナルX ,conti,Electric Eel Shock,レンタカー,俺はこんなもんじゃない,BOSSSTON CRUIZING MANIA,テクマ!,brig,THEマニラ帰り,ジョー長岡&スッパマイクロパンチョップ,ハイタワーZ,プラズマ11,スペースカンフーマン
強烈な個性を放つ、色とりどりのバンド群とバンド人。
一秒も飽きさせることなく、めくるめく展開される、
パワフルで魅力的な演奏。
そのカラフルさが、修ちゃんの人柄と音楽人生を象徴しているような、夢のような6時間。
そして、何より、出演人やお客さんの中に強く持ち続けていることは、
とにかくみんな“修ちゃんが好き”という気持ち。
その修ちゃんへの“愛”が作り上げる会場の一体感は、
体験したことのないような高揚を極めつつ、
温かく、すがすがしく、愉快で、優しさに溢れるものだった。
会場どこを見回しても、そこらじゅうに笑顔があり、
それぞれに音楽と食事を楽しみ、
イベントを味わい尽くしているようで。
イベントに携わるものすべてが、アーティスト魂の結集。
関わってくれた多くの人々に、感謝しきるばかりだ。
*
私は、ひとつひとつの演奏に、修ちゃんを想い、
地響きする低音にも、複雑なリズムや緻密な演奏にも、
浪々と響き渡る歌声にも、神がかりなアクションにも、
すべてに涙を浮かべながら、全身で感動した。
そして、誰より、このイベントを楽しんでいるのは、
修ちゃんのはずで、
「イェーーーイ」と大きく歓喜する叫び声も、
会場の歓声に混ざっていたはず。
終演の頃には、泥酔し、顔を赤らめ、
満足気にゴロンと横になっている彼の姿が
目に見えるようだった。
修ちゃん、素晴らしい時間と繋がりをありがとう。
手のひらに
12月24日(火)
3回目の月命日も終わり、
あっけなく年の瀬をむかえようとしている。
月命日の17日は、決まって満月近辺。
完全なフルムーンかそれに近い月が、夜空に顔を出す。
まるでトッチャがニッコリ笑っているよう。
お墓参りの帰りには、夜空にその存在を確認する。
*
夫のいない日常に、相変わらず惜別の思いは深く、
シクシクと暮らしているのは私だけだろうなぁ
と思いながら、居る。
でも、そんなことは当然だし、それでいい。
そんなとき、
修ちゃんを愛する友人や家族が集まり、“修ちゃん” について語りあったり、
思いがけずに訪ねてきてくれて、“修ちゃん” について語りあったり、
招いてくれて “修ちゃん” について語りあったり、
そんな時間が、最高に楽しくて、
救われる。
そして思う。
夫、修ちゃんは、“修ちゃん” とくくれる人物であったこと。
“修ちゃん” ならこれが好きだろうとか、
“修ちゃん” ならこう言うだろうとか、
これって “修ちゃん” ぽいとか、
“修ちゃん” のお陰で今があるとか、
皆、口を揃えて語っている。
まるで、一個のカテゴリーであるかのように。
偉大だ。
♪♪♪♪♪
少し前のことだけど、
修ちゃんの追悼ライブ打ち合せのため、新旧友人が集まり、
“あなたの中の修ちゃん” と題して持ち寄った音源。
※選曲メンバー:
①マスダユキ ②DJミステイク ③ショージくん
④橋本くん ⑤タロウさん ⑥フッタくん
⑦狩生くん ⑧まり子 ⑨ヤッさん
いつも好奇心旺盛で、
その時代において、柔軟に貪欲に変化する彼の音楽遍歴。
それぞれが “修ちゃん” を自分本位に表現する、
興味深いラインナップ。
* * *
メイは、今日、12月24日で3才を迎えた。
黒目の大きい、奥の深い目の雰囲気が、
ドキッとするほどトッチャにそっくりだ。
眼光鋭いときも、大笑いしているときも、
優しく微笑んでいるときも。
*
メイはいつもトッチャと一緒に居る。
家の中でも、外でも、トッチャに話しかける。
手のひらに乗せている仕草をして
「手乗りトッチャ」を大事そうに持つ。
「ママぁ〜、トッチャ可愛いよね〜!」と。
メイの中のトッチャは、不思議なコビトトッチャ。
メイの中でトッチャは進化している。
四十九日とその間
11月4日(月)
初秋、快晴の、夫が天に登った日から、
早くも49日が経つ。
四十九日法要が済み、立派なお墓に入る。
石御殿。
めいいっぱい遺骨の詰まった骨壺は、
とても重たくて、
その重さを覚えていようと、
お墓に入る前、ずっと抱きかかえていた。
お墓に納まるときには、
また寂しさがぐっとこみ上げ、
涙が溢れる。
死んだ人は、たった49日の間に、
姿カタチがどんどん変わり、
仏の弟子となる。
彼は、きっと、前向きな転身を遂げているはず。
*
私は、この時の流れに、速さに、身も心もついて行けず、
マイペース極まりなく、腑抜けた心持ちで過ごしている。
私から欠けて落ちた部分は、想像よりも遥かに大きくて、
未完成の自分がフラフラと漂っている。
気がつくと、
彼の声を思い出し、感触を思い出す、
ことばかりしている。
** **
トッチャ、メイがね、
楽しそうに、スピード上げて、たくさん歩けるようになったよ。
「潮騒のメモリー」を大きな声で上手に歌ってくれるよ。
キティちゃんのパンツがはきたくて、紙パンツを卒業したよ。
相変わらず、エビのしょっぱい煎餅ばかりほしがるよ。
チーズパンじゃなくて、レーズンパンが好きになったよ。
お友達のはなしを、細かくたくさんしてくれるよ。
「いがいと〜、タイチは〜.........」なんてギャルっぽく話すよ。
運動会で、おお張り切りに体操して、くだもの競争もがんばったよ。
お星様やお月様を見つけると「トッチャだーー!」って叫ぶんだよ。
「トッチャ行ってきまーす」「トッチャただいまー」が日課だよ。
祭壇の前に座って、おやつを分けてくれてるよ。
拾ってきた落ち葉や石を、大事そうにあげてるよ。
小さいお膝を折り曲げて、小さい手に数珠をしっかり巻いて、
目をつぶって、手を合わせているよ。
☆
メイを愛する大人達、みんなに可愛がってもらっているよ。
愛嬌のある可愛い笑顔は、ますます女の子らしく輝いているよ。
ママとね、相変わらず仲良く、いつもヒッツイてるよ。
☆
きっと全部、知ってることだよね。
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お礼のことば
9月21日の葬儀にて、
述べさせていただきました、
お礼のことばです。
お通夜にご参列いただいた皆様、
葬儀にお越しいただけなかった皆様、
遠い海外で私達を見守ってくださっている皆様に
あてて、お礼を述べさせてください。
* * * *
本日は、お忙しいところ、夫・修一の葬儀にご会葬くださいまして、誠にありがとうございます。
このように大勢の方々にお見送りいただき、さぞかし夫も喜んでいることと存じます。
あまりにも早い別れに、困惑していらっしゃる方々も多いかと思います。
野人のような、原人のような生命力溢れる彼のたたずまいに、
病魔が入り込んでくる余地は、まったくを持って想像できなかったかと思います。
私も、彼のその眩しいくらいの生命力に憧れ、彼を愛おしく思ったひとりです。
夫は生前、修ちゃんとか修さんとか、娘にはトッチャと呼ばれ、年上の人にも年下の人にも、男にも女にも愛され、慕われておりました。
音楽好きでライブ活動をし、その仲間を中心に、いつも楽しい企画を立てては、人を集め、人生を楽しんでいました。
彼に出会う人、ほとんどの人が彼の「良さ」を、感覚的に感じる事ができ、
たちまち彼を好きになったことでしょう。
それは、
おおらかで、優しくて、
人なつっこくて、ユーモアがあって、
人を驚かせるのが好きで、人を褒めることが好きで、
バカバカしいことが好きで、たくらむことが好きで、
細かいところにこだわりがあって、笑い声が大きくて、
少し危なっかしくて、
そんな誰からも愛されるキャラクターを、
あまりにも自然に持っていた彼でした。
そんな彼の周りには、たくさんの人が集まり、
いつもエネルギーのある場所を作っていました。
かっこいいギターを弾いて、変な格好でキーボードを弾いて、
最高のライブパフォーマンスが目に焼き付いています。
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2年半前に娘のメイが生まれ、私達、トッチャとママとメイは、幸せ絶頂の生活を送っていました。
そして、メイがちょうど1才半を迎えるころ、病魔が彼を襲いました。
3度の手術、放射線治療、先の見えない抗ガン剤治療を続け、
辛く過酷な病状のなかでも、
彼は、泣き言も、愚痴も、いっさい言わずに、
いつも「修ちゃんっぽく」て、
どんな状況でも冗談やギャグを言い、
メイとわたしや、家族や友人を楽しませ、気遣ってくれました。
息を引き取る寸前まで、彼の独特のユーモアで、周りの人、
みんなを楽しませてくれました。
そして、最後の最後まで、
修ちゃんが必ず奇跡を起こすと、ただでは済まさない男だと、
みんなが信じていましたが、
叶わぬところとなってしまいました。
少しずつ蝕まれる体、出来なくなる事が増えていくこと、
変化していくことが不安でたまらなく、
辛くてたまらなかったはずです。
それでも、ずっとずっと修ちゃんは変わらず、病気であることをしっかりと受け入れ、
無理にがんばりもせず、自然に私たちと過ごしてくれました。
そんな彼を心から誇りに思い、尊敬します。
*
あまりにも早い別れに、私は、まだまだ受け入れることはできません。
これから長く続くはずだった、トッチャとママとメイの楽しく愉快な生活は、
簡単に思い描く事ができます。
それが叶わなくなってしまったこと、とても悔しいです。
ですが、子煩悩で家族思いの彼ですから、
形を変えても、ずっとずっと、そばにいてくれると思います。
そして、たまに、私達を驚かせるような、
何かサインをくれるような気がします。
これまで、彼を慕い、愛してくれた皆様、
支えてきてくれた皆様に、
心から御礼申し上げます。
メイとふたりの生活になりましたが、
いつでもトッチャの存在を感じながら、
強く生きて行きたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
妻・市川麻里子
♪♪♪
このあと、プラズマ11の相方、
ダッチャンのかけ声で、
「シューちゃん!」コール。
弔辞と旅人
9月20日(金) 21日(土)
20日、延命寺にて故・市川修一の通夜、
21日、葬儀がとり行われました。
秋晴れ快晴の空の下
2日間に渡り、300人を優に越える、
大変多くの方々にご参列いただきました。
ご参列くださいました皆様、
御供花や御弔電をお送りくださった皆様、
誠にありがとうございました。
*
ところどころで、懐かしい友人達が
再会を喜んでいるような場面も多くみられ、
修ちゃんが、人々を呼び集め、
旧交を温める場を作っているように思えました。
悲しい別れの場ではありましたが、
出棺の前、お別れのときには、
「シューちゃん! シューちゃん!」と
修ちゃんコールで、
ライブのような盛り上がりのある
ユニークな葬儀になりました。
修ちゃんらしく。
*
そして、
友人のシンガーソングライター、
ジョー長岡さんの弔辞、
素晴らしく、
溢れる涙が止まりませんでした。
ジョーさんが語ってくれた修ちゃんは、
修ちゃんそのもので、
皆が愛した修ちゃんがそこにいました。
ここにジョーさんの弔辞、
リンクを貼らせてもらいます。
弔辞 - 音瓶波ラヂオ
最後に、ジョーさんが旅立つ修ちゃんのために
作ってくれた唄「旅人」、
会場内すみずみに響き渡る声で、
朗々と歌い上げてくれました。
詩の掲載。
旅人 - 音瓶波ラヂオ
歌っていた時、
僕の前にシュウさんが居ました。
ニヤニヤしているシュウさんを
ずっと感じてた。
と、ジョーさんの談。
*
会場内には、修ちゃんのライブセットと、
徹夜で制作した、修ちゃん年表と思い出の写真パネル。
修ちゃんの旅立ちにふさわしい、
葬儀ライブになったように思えます。
懐かしい友人や、親しい友人、お世話になった方々、
一堂に会したこと、
満足そうに、白い歯を見せて、
にんまりしている姿が想像できます。
***
火葬のあと、
骨に変わった修ちゃんを目の前に、
息ができないくらいに傷心していたところ、
ダッチャンがメイに
「トッチャ、ホネホネロックだね!」
と言って抱きしめてくれました。
なんだか、とても、救われて、
楽になったような気がして。
これからトッチャは、
“ホネホネロック” です。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
旅立ち
9月17日(火)
本日、21時43分。
夫、修ちゃん、トッチャは、
家族や大勢の友人に囲まれ、
この世を旅立ちました。
私は、夫の、息を引き取る、
その瞬間をしっかりと感じ、
見送ることができました。
*
昨日の午後、台風18号が去ると同時に
危篤となり、
浅く苦しい呼吸をしながらも、
私とメイ、家族全員、
彼を慕い集まってくれる友人達を、
待っててくれました。
最後まで、粋で、勇敢で、愉快な生き様は
天晴れというほかありません。
*
生前、夫を愛し、慕ってくれた皆さま、
闘病中、私たち家族を見守り、
励まし続けてくださった皆さま、
心から感謝いたします。
まだまだ気持ちの整理はつきません。
ママとメイの大事な大事なトッチャを
失う喪失感は言葉にしようもありません。
だけど、今は、
トッチャお疲れさま。
トッチャありがとう。
ずっと大好きだよ。
と、ただ、言いたいです。