一周忌


9月17日(水)


亡き夫を想って過ごす日々、
ようやく、一年が経つ。

惜別の苦しみ、深さを想うと、とても長く、
メイの成長や、日々の生活、営みを思うと
あまりにも早い。



今年は、涼しく心地良い初秋。
昨年の今頃は、まだまだ蒸し暑く、
汗だか涙だか、とにかくたくさんの水分が
止めどなく、溢れ出ていたことを思い出す。

昨年とはまったく違う空気。

一年経つと、目に見えるもの、目に見えないもの、
あらゆるものが変化する。

悲しみは、依然、深いところにあるけれど、
それを持ったまま、
気持ちが少しずつ少しずつ変化している。



メイは3歳半になり、
愛くるしい笑顔で私を毎日元気づけてくれる。

ワイルドな振る舞いをするけど、とてもとても優しい子。
楽しいことを全身で喜び、
好きなことや人に、素直に好きと言え、
「ありがとう」も「ごめんなさい」も自然に言える。
誰にでも大きな声で挨拶をし、
「ママのスカート素敵!」とか「ママ、お料理上手だね〜!」
と屈託なく私を褒めてくれさえする。
そして、音楽が大好き。
トッチャにそっくりだ。

これ以上教えることは無いか、と思うくらい、
子育ては、順調。



メイの夏:花火や子供御輿



この夏は、初盆で、夫の魂を迎え、そして、送る。

まもなく、一周忌法要があり、魂を供養する。

寄居の空気の良い、山の上の、お墓を拠点に。



今日は、ちょうど一年。祥月命日。

トッチャの好きなビールと餃子をお供えし、
メイとヒロミで静かに過ごす。


21時43分。合掌。


“Norweigian Wood”という銘柄のお線香を焚き、
ノルウェーの森』をBGMに。

「やるじゃん、まり子!」と声が聞こえたような。






〈rollo.11〉追悼ライブ後記


3月2日(日)


2月27日はトッチャの誕生日。
生きていれば46歳。
今年もこれまでと同じように、
ケーキを囲み、メイが「ハッピーバースデー♪トッチャ〜!」
と高らかに歌ってくれる。

メイは「トッチャ、おめでと〜う!!」と
お仏壇に向かってニコニコと言い放つ。


メイは、形が変わってしまったトッチャの存在を、
何の疑いもなく、素直に、自分のパパとして大事に抱えている。

私も、メイと一緒にいることで、
その気持ちを強く持つことができる。

私たちにとってトッチャは、いつでもどこでも、
変幻自在に一緒にいられる、お髭の生えたワイルドな妖精だ。

このままずっと、空想好きな親子でありたい。


***


夫の通夜・葬儀の時から、
ヤッサン、フッタ君、ショージ君が発起人となり
「誕生日あたりに、修ちゃんの追悼ライブやろう!」ということになっていた。

それは、実行委員(ヤッサン、フッタ君、ショージ君、DJミステイク、マスダユキ、タロウ、まり子)を中心に綿密に計画され、
度重なるいくつかの難事にもめげずに、
3月2日(日)『rollo vol.11 追悼・市川修一しばり20分1本勝負』が無事に開催された。

中心に運営してきてくれたリーダーのヤッサンが、前日に胆石がうずき始め、緊急入院となってしまったことは残念だけど、ヤッサンのためにもこのイベントを成功させようと、みな奮起した。


『〈rollo vol.11〉追悼・市川修一しばり 20分1本勝負』
司会:藤井君+(時々アインちゃん)/映像:SAM1
FOOD:マサラワーラー,SPICE ADDICTS
出演:スッパバンド,ヤッホーシリアス,道産子アナルX ,conti,Electric Eel Shock,レンタカー,俺はこんなもんじゃないBOSSSTON CRUIZING MANIA,テクマ!,brig,THEマニラ帰り,ジョー長岡&スッパマイクロパンチョップ,ハイタワーZ,プラズマ11,スペースカンフーマン



強烈な個性を放つ、色とりどりのバンド群とバンド人。
一秒も飽きさせることなく、めくるめく展開される、
パワフルで魅力的な演奏。
そのカラフルさが、修ちゃんの人柄と音楽人生を象徴しているような、夢のような6時間。


そして、何より、出演人やお客さんの中に強く持ち続けていることは、
とにかくみんな“修ちゃんが好き”という気持ち。
その修ちゃんへの“愛”が作り上げる会場の一体感は、
体験したことのないような高揚を極めつつ、
温かく、すがすがしく、愉快で、優しさに溢れるものだった。


会場どこを見回しても、そこらじゅうに笑顔があり、
それぞれに音楽と食事を楽しみ、
イベントを味わい尽くしているようで。


マサラワーラーとSPICE ADDICTSのインド料理


バチケン・デザイン&イラスト・マンゴーのポスター


DJミステイク・デザインのステッカー

イベントに携わるものすべてが、アーティスト魂の結集。
関わってくれた多くの人々に、感謝しきるばかりだ。



私は、ひとつひとつの演奏に、修ちゃんを想い、
地響きする低音にも、複雑なリズムや緻密な演奏にも、
浪々と響き渡る歌声にも、神がかりなアクションにも、
すべてに涙を浮かべながら、全身で感動した。


そして、誰より、このイベントを楽しんでいるのは、
修ちゃんのはずで、
「イェーーーイ」と大きく歓喜する叫び声も、
会場の歓声に混ざっていたはず。


終演の頃には、泥酔し、顔を赤らめ、
満足気にゴロンと横になっている彼の姿が
目に見えるようだった。


修ちゃん、素晴らしい時間と繋がりをありがとう。



手のひらに


12月24日(火)

3回目の月命日も終わり、
あっけなく年の瀬をむかえようとしている。

月命日の17日は、決まって満月近辺。
完全なフルムーンかそれに近い月が、夜空に顔を出す。
まるでトッチャがニッコリ笑っているよう。
お墓参りの帰りには、夜空にその存在を確認する。


夫のいない日常に、相変わらず惜別の思いは深く、
シクシクと暮らしているのは私だけだろうなぁ
と思いながら、居る。
でも、そんなことは当然だし、それでいい。


そんなとき、
修ちゃんを愛する友人や家族が集まり、“修ちゃん” について語りあったり、
思いがけずに訪ねてきてくれて、“修ちゃん” について語りあったり、
招いてくれて “修ちゃん” について語りあったり、
そんな時間が、最高に楽しくて、
救われる。


そして思う。
夫、修ちゃんは、“修ちゃん” とくくれる人物であったこと。

“修ちゃん” ならこれが好きだろうとか、
“修ちゃん” ならこう言うだろうとか、
これって “修ちゃん” ぽいとか、
“修ちゃん” のお陰で今があるとか、
皆、口を揃えて語っている。
まるで、一個のカテゴリーであるかのように。

偉大だ。


♪♪♪♪♪


少し前のことだけど、
修ちゃんの追悼ライブ打ち合せのため、新旧友人が集まり、
“あなたの中の修ちゃん” と題して持ち寄った音源。



※選曲メンバー:
①マスダユキ ②DJミステイク ③ショージくん
④橋本くん ⑤タロウさん ⑥フッタくん
狩生くん ⑧まり子 ⑨ヤッさん

いつも好奇心旺盛で、
その時代において、柔軟に貪欲に変化する彼の音楽遍歴。
それぞれが “修ちゃん” を自分本位に表現する、
興味深いラインナップ。


* * *


メイは、今日、12月24日で3才を迎えた。

黒目の大きい、奥の深い目の雰囲気が、
ドキッとするほどトッチャにそっくりだ。
眼光鋭いときも、大笑いしているときも、
優しく微笑んでいるときも。


七五三を経て


3歳をむかえる


メイはいつもトッチャと一緒に居る。
家の中でも、外でも、トッチャに話しかける。
手のひらに乗せている仕草をして
「手乗りトッチャ」を大事そうに持つ。

「ママぁ〜、トッチャ可愛いよね〜!」と。


メイの中のトッチャは、不思議なコビトトッチャ。
メイの中でトッチャは進化している。



四十九日とその間


11月4日(月)


初秋、快晴の、夫が天に登った日から、
早くも49日が経つ。
四十九日法要が済み、立派なお墓に入る。
石御殿。

めいいっぱい遺骨の詰まった骨壺は、
とても重たくて、
その重さを覚えていようと、
お墓に入る前、ずっと抱きかかえていた。

お墓に納まるときには、
また寂しさがぐっとこみ上げ、
涙が溢れる。


死んだ人は、たった49日の間に、
姿カタチがどんどん変わり、
仏の弟子となる。
彼は、きっと、前向きな転身を遂げているはず。



私は、この時の流れに、速さに、身も心もついて行けず、
マイペース極まりなく、腑抜けた心持ちで過ごしている。

私から欠けて落ちた部分は、想像よりも遥かに大きくて、
未完成の自分がフラフラと漂っている。

気がつくと、
彼の声を思い出し、感触を思い出す、
ことばかりしている。



** **


トッチャ、メイがね、


楽しそうに、スピード上げて、たくさん歩けるようになったよ。
潮騒のメモリー」を大きな声で上手に歌ってくれるよ。
キティちゃんのパンツがはきたくて、紙パンツを卒業したよ。
相変わらず、エビのしょっぱい煎餅ばかりほしがるよ。
チーズパンじゃなくて、レーズンパンが好きになったよ。


お友達のはなしを、細かくたくさんしてくれるよ。
「いがいと〜、タイチは〜.........」なんてギャルっぽく話すよ。
運動会で、おお張り切りに体操して、くだもの競争もがんばったよ。


お星様やお月様を見つけると「トッチャだーー!」って叫ぶんだよ。
「トッチャ行ってきまーす」「トッチャただいまー」が日課だよ。


祭壇の前に座って、おやつを分けてくれてるよ。
拾ってきた落ち葉や石を、大事そうにあげてるよ。
小さいお膝を折り曲げて、小さい手に数珠をしっかり巻いて、
目をつぶって、手を合わせているよ。



メイを愛する大人達、みんなに可愛がってもらっているよ。

愛嬌のある可愛い笑顔は、ますます女の子らしく輝いているよ。

ママとね、相変わらず仲良く、いつもヒッツイてるよ。



きっと全部、知ってることだよね。


                                                    • -






お礼のことば

9月21日の葬儀にて、
述べさせていただきました、
お礼のことばです。

お通夜にご参列いただいた皆様、
葬儀にお越しいただけなかった皆様、
遠い海外で私達を見守ってくださっている皆様に
あてて、お礼を述べさせてください。


* * * *


本日は、お忙しいところ、夫・修一の葬儀にご会葬くださいまして、誠にありがとうございます。
このように大勢の方々にお見送りいただき、さぞかし夫も喜んでいることと存じます。


あまりにも早い別れに、困惑していらっしゃる方々も多いかと思います。
野人のような、原人のような生命力溢れる彼のたたずまいに、
病魔が入り込んでくる余地は、まったくを持って想像できなかったかと思います。
私も、彼のその眩しいくらいの生命力に憧れ、彼を愛おしく思ったひとりです。


夫は生前、修ちゃんとか修さんとか、娘にはトッチャと呼ばれ、年上の人にも年下の人にも、男にも女にも愛され、慕われておりました。
音楽好きでライブ活動をし、その仲間を中心に、いつも楽しい企画を立てては、人を集め、人生を楽しんでいました。
 

彼に出会う人、ほとんどの人が彼の「良さ」を、感覚的に感じる事ができ、
たちまち彼を好きになったことでしょう。


それは、
おおらかで、優しくて、
人なつっこくて、ユーモアがあって、
人を驚かせるのが好きで、人を褒めることが好きで、
バカバカしいことが好きで、たくらむことが好きで、
細かいところにこだわりがあって、笑い声が大きくて、
少し危なっかしくて、

そんな誰からも愛されるキャラクターを、
あまりにも自然に持っていた彼でした。

そんな彼の周りには、たくさんの人が集まり、
いつもエネルギーのある場所を作っていました。

かっこいいギターを弾いて、変な格好でキーボードを弾いて、
最高のライブパフォーマンスが目に焼き付いています。



2年半前に娘のメイが生まれ、私達、トッチャとママとメイは、幸せ絶頂の生活を送っていました。
そして、メイがちょうど1才半を迎えるころ、病魔が彼を襲いました。

3度の手術、放射線治療、先の見えない抗ガン剤治療を続け、
辛く過酷な病状のなかでも、
彼は、泣き言も、愚痴も、いっさい言わずに、
いつも「修ちゃんっぽく」て、
どんな状況でも冗談やギャグを言い、
メイとわたしや、家族や友人を楽しませ、気遣ってくれました。


息を引き取る寸前まで、彼の独特のユーモアで、周りの人、
みんなを楽しませてくれました。
そして、最後の最後まで、
修ちゃんが必ず奇跡を起こすと、ただでは済まさない男だと、
みんなが信じていましたが、
叶わぬところとなってしまいました。


少しずつ蝕まれる体、出来なくなる事が増えていくこと、
変化していくことが不安でたまらなく、
辛くてたまらなかったはずです。


それでも、ずっとずっと修ちゃんは変わらず、病気であることをしっかりと受け入れ、
無理にがんばりもせず、自然に私たちと過ごしてくれました。

そんな彼を心から誇りに思い、尊敬します。



あまりにも早い別れに、私は、まだまだ受け入れることはできません。
これから長く続くはずだった、トッチャとママとメイの楽しく愉快な生活は、
簡単に思い描く事ができます。
それが叶わなくなってしまったこと、とても悔しいです。


ですが、子煩悩で家族思いの彼ですから、
形を変えても、ずっとずっと、そばにいてくれると思います。
そして、たまに、私達を驚かせるような、
何かサインをくれるような気がします。


これまで、彼を慕い、愛してくれた皆様、
支えてきてくれた皆様に、
心から御礼申し上げます。


メイとふたりの生活になりましたが、
いつでもトッチャの存在を感じながら、
強く生きて行きたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。


妻・市川麻里子


♪♪♪


このあと、プラズマ11の相方、
ダッチャンのかけ声で、

「シューちゃん!」コール。




 

弔辞と旅人


9月20日(金) 21日(土)


20日、延命寺にて故・市川修一の通夜、
21日、葬儀がとり行われました。


秋晴れ快晴の空の下
2日間に渡り、300人を優に越える、
大変多くの方々にご参列いただきました。

ご参列くださいました皆様、
御供花や御弔電をお送りくださった皆様、
誠にありがとうございました。



ところどころで、懐かしい友人達が
再会を喜んでいるような場面も多くみられ、
修ちゃんが、人々を呼び集め、
旧交を温める場を作っているように思えました。


悲しい別れの場ではありましたが、
出棺の前、お別れのときには、

「シューちゃん! シューちゃん!」と

修ちゃんコールで、
ライブのような盛り上がりのある
ユニークな葬儀になりました。
修ちゃんらしく。



そして、
友人のシンガーソングライター、
ジョー長岡さんの弔辞、
素晴らしく、
溢れる涙が止まりませんでした。

ジョーさんが語ってくれた修ちゃんは、
修ちゃんそのもので、
皆が愛した修ちゃんがそこにいました。

ここにジョーさんの弔辞、
リンクを貼らせてもらいます。
弔辞 - 音瓶波ラヂオ


最後に、ジョーさんが旅立つ修ちゃんのために
作ってくれた唄「旅人」、
会場内すみずみに響き渡る声で、
朗々と歌い上げてくれました。

詩の掲載。
旅人 - 音瓶波ラヂオ

歌っていた時、
僕の前にシュウさんが居ました。
ニヤニヤしているシュウさんを
ずっと感じてた。
と、ジョーさんの談。



会場内には、修ちゃんのライブセットと、
徹夜で制作した、修ちゃん年表と思い出の写真パネル。



修ちゃんの旅立ちにふさわしい、
葬儀ライブになったように思えます。

懐かしい友人や、親しい友人、お世話になった方々、
一堂に会したこと、
満足そうに、白い歯を見せて、
にんまりしている姿が想像できます。


***


火葬のあと、
骨に変わった修ちゃんを目の前に、
息ができないくらいに傷心していたところ、

ダッチャンがメイに
「トッチャ、ホネホネロックだね!」
と言って抱きしめてくれました。

なんだか、とても、救われて、
楽になったような気がして。


これからトッチャは、
“ホネホネロック” です。


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪



旅立ち


9月17日(火)


本日、21時43分。

夫、修ちゃん、トッチャは、
家族や大勢の友人に囲まれ、
この世を旅立ちました。


私は、夫の、息を引き取る、
その瞬間をしっかりと感じ、
見送ることができました。



昨日の午後、台風18号が去ると同時に
危篤となり、
浅く苦しい呼吸をしながらも、
私とメイ、家族全員、
彼を慕い集まってくれる友人達を、
待っててくれました。


最後まで、粋で、勇敢で、愉快な生き様は
天晴れというほかありません。



生前、夫を愛し、慕ってくれた皆さま、
闘病中、私たち家族を見守り、
励まし続けてくださった皆さま、
心から感謝いたします。


まだまだ気持ちの整理はつきません。
ママとメイの大事な大事なトッチャを
失う喪失感は言葉にしようもありません。


だけど、今は、

トッチャお疲れさま。
トッチャありがとう。
ずっと大好きだよ。

と、ただ、言いたいです。