引きつづき、おまじない


9月14日(土)


勢いはどうにかして止められないのか。

できる治療を全てやり尽くしても、
夫の頭を支配しよとしている腫瘍群はビクともせず、
さらに勢いを増して、押し進めてくる。

脳幹を取り囲み方むカタマリは、
傲慢に、侵攻し、つぶそうとしている。
憎たらしい顔つき。

ということが、昨日のMRI検査ではっきりした。



夫は、声を出す事がかなり厳しくなり、
意思表示は小さくかすれた声から、口の動きから、表情から読み取る。
それと、ゆっくりと動かすジェスチャー


メイのおまじないは、
「チチンプイプイの べーーーー」に、
「チチンプイプイの オナラーーー!」
が加わった。

病室に反響するくらいの大声で、毎日、何度も叫んでいる。

勢いをつけるため、カウントダウンも付け加えるが
「さん、しー、ごー! チチンプイプイのオナラーーー!」
と、めちゃくちゃだ。
みんなで大笑い。

メイの気迫とくるくる回す指につられて、
トッチャも右手人差し指を立てて、ゆっくり円をかく。

おまじないは最強のはずだ。



奇跡、起きて欲しい。

治療を全て止めた時、
何かのきっかけで、スーっと腫瘍が抜け出るんじゃないか。
宇宙まで飛んで行くんじゃないか。
そんな力が、修ちゃんにはあるんじゃないか。

点滴を抜いて、電車に乗って、
途中でラーメンでも食べて、
家まで帰ってくるんじゃないか。


家族みんな、友人達みんなが、
心からそんなことを本気で本気で信じている。

余命がうんぬんとか、いくら言われても。