引きつづき、おまじない
9月14日(土)
勢いはどうにかして止められないのか。
できる治療を全てやり尽くしても、
夫の頭を支配しよとしている腫瘍群はビクともせず、
さらに勢いを増して、押し進めてくる。
脳幹を取り囲み方むカタマリは、
傲慢に、侵攻し、つぶそうとしている。
憎たらしい顔つき。
ということが、昨日のMRI検査ではっきりした。
*
夫は、声を出す事がかなり厳しくなり、
意思表示は小さくかすれた声から、口の動きから、表情から読み取る。
それと、ゆっくりと動かすジェスチャー。
メイのおまじないは、
「チチンプイプイの べーーーー」に、
「チチンプイプイの オナラーーー!」
が加わった。
病室に反響するくらいの大声で、毎日、何度も叫んでいる。
勢いをつけるため、カウントダウンも付け加えるが
「さん、しー、ごー! チチンプイプイのオナラーーー!」
と、めちゃくちゃだ。
みんなで大笑い。
メイの気迫とくるくる回す指につられて、
トッチャも右手人差し指を立てて、ゆっくり円をかく。
おまじないは最強のはずだ。
*
奇跡、起きて欲しい。
治療を全て止めた時、
何かのきっかけで、スーっと腫瘍が抜け出るんじゃないか。
宇宙まで飛んで行くんじゃないか。
そんな力が、修ちゃんにはあるんじゃないか。
点滴を抜いて、電車に乗って、
途中でラーメンでも食べて、
家まで帰ってくるんじゃないか。
家族みんな、友人達みんなが、
心からそんなことを本気で本気で信じている。
余命がうんぬんとか、いくら言われても。