発端

 夫の帰宅後、突然の告白だった。
 会社の社長さんに、
「しばらくゆっくり休むか、病院で検査を受けたほうがいいのではないか、、、」と言われたと。

 なぜ? 修ちゃんに何が起きているの??

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 3月下旬以来、耳の閉塞感を訴え、耳鼻科へ受診していた。6月になって状態がよくならないため再び受診した。この3ヵ月でかなり悪くなっているとのことで T I 大学病院の耳鼻科を紹介された。しかし、診断はたいした難聴でもないとのことだった。

 一般的な難聴の薬(ビタミン剤のようなもの)を飲んで様子をみるように言われた2週間後のことだった。

 最近記憶が飛ぶ、仕事でミスをする、ボーッとする、ついさっきまでやっていた仕事を忘れてしまう、、、など。ここ最近彼を悩ませていた症状を告白してくれた。これらの症状を騙しながら、やり過ごしながら必死で頑張っていたのだ。

 そんなことを告白され、
「きっと飲んでる薬のせいだよ。修ちゃんの仕事は精密で細かい作業だから、たまのミスなんて仕方がないよ。わたしのほうがもっと忘れっぽいよ」
などと、その事実を大したことではないと打ち消すように元気ずけ、最近の彼の仕事の愚痴をひとしきり聞いた。

 「まり子に聞いてもらってすっきりした。ありがとう。」
と言われ、少しホットしながらその日は就寝した。