発症


 朝一で芽生を保育園に送って行き、その足で、以前から耳鼻科にかかっているTI大学病院へ向かう。

 車の中でも、相変わらず頭痛と吐き気を訴える。とても辛そうで居たたまれなくなる。車を降りたととたんに、道端に吐いている。よっぽどだ。本人は二日酔いに似ているとのん気なことを言っている。


 とりあえず、耳鼻科を受診し、最近の症状を話すと、先生も焦りながらすぐにCTを取ってくるよう言われる。CTの結果、
「私の口からはなんとも言えませんが、このまま脳外科を受診してください」
とのこと。先生も緊迫している様子。余計焦るじゃないか!
 対応から確実に何か悪いことが起きている、、、と容易に想像でき、不安でたまらなくなる。


 修ちゃんは、そんな私の不安と焦りを察して、わざとふざけたことを言って場を和ませようとする。私もくだらないオヤジギャグにいちいち付き合い、不安をかき消そうとする。


 脳神経外科外来の前でかなり待たされる。修ちゃんは頭痛と吐き気があるものの、この私との待ち時間を楽しもうといろんな話しをして盛り上げてくれる。
 そういえば、いつも芽生中心で過ごしていたので、2人だけでこんなにゆっくり話しをするのは久しぶりだ。そして、昨日より記憶もはっきりしているし、変なところがない。いつもの修ちゃんだ。不安な気持ちはつのるばかりで緊迫しているが、とても楽しい。

 1時間以上待たされ、診察室に呼ばれる。先生の口から出たのは、
「頭に水が溜まってます。水頭症です。そして、水頭症になっている原因として、ここに腫瘍があることが想像されます。CTではあまりはっきり写ってませんが、ほら、ここが白くなってるでしょ。」と。

 ずいぶんなことを、淡々と言うなぁ、、、、と唖然とする。
今からMRIを撮ってくるよう、すぐにでも入院したほうがいいが、ベッドの空きがないから今日のところは帰って明日また来るようにと。

 ふたりともただただ唖然とし、この深刻な事態を信じたくない、きっと何かの間違いだという気持ちでいっぱいになる。


 すぐに田舎の母に電話し、抑えていた気持ちが一気に爆発し、大泣きしながら母に話す。
 その様子にすごく驚き、「すぐに行くわっ」と電話を切る。
 金沢からくるので「すぐ行くわ」という距離ではないのだが。


 MRIを撮っている間、昭治くんにも電話し、一連のことを伝える。取り乱している私の様子にびっくりし、「大丈夫、大丈夫」と慰めてくれる。明日、休みをとって一緒に付いてきてくれると言ってくれ、何よりもの安心を得る。
 昭治くんが一緒に来てくれれば安心だ。

 帰宅後、修ちゃんの会社に電話をし、現状を話す。社長さんもとても心配そうに、
「つらかったんだなぁ。ああいう性格だから相当我慢してたんですね。しっかり治療してくださいね。」
としみじみ同情している。いい社長さんだ。


 夜遅くに母が到着。
修ちゃんは横になったきり、辛そうではあるが、
「お母さん、ホントすみません!」といつもの大きな声で侘びている。
母は、辛そうな修ちゃんの姿に驚き、心配しながらも、
「そんなのいいのよ! とにかく明日入院して、ちゃんと治療しなくちゃね」
と当たり前のことを冷静に言う。
 その通りだ。