希望

 
 今日は、いよいよ主治医のS島先生による病理の説明と今後の治療方針の説明だ。義父、義母、兄弟姉妹全員集合、父、兄も参加。皆、力の限り支えてくれていてありがたい。

 朝から、立て込んでいる仕事をひとつひとつ片付ける。ラジオから『Good viberation』がかかる。修ちゃんがビーチ・ボーイズの絶大なる評価を交えたうんちくを朗々と語る姿を思い出す。
 自信たっぷりに音楽の話しを本当に楽しそうに語る姿がとても好きだ。愛おしい光景。

ビーチ・ボーイズのライブに行きたいね、とつい最近も語り合ったばかりだ。
「今一番行きたいライブは?」と聞くと
「チャボの弾語り。梅津さんあたりが参加していると最高だ!」と。
なんとも修ちゃんらしい。こういうところがいい。

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 午後6時より、S島先生からの病理、治療方針の説明会。全員早めの集合で気合いが感じられる。
 9人も家族が集まり、予定していたカンファレンスルームには入れず急遽大きな会議室へ案内される。
 修ちゃんはカテーテルの検査をし、安静にするため説明会には車椅子で参加。

 S島先生からの説明は、とても明快で分かりやすく、決して悲観的なものではなく、希望を持たせ、家族への気遣い、患者への気遣いにあふれた最高のホスピタリティ感のある素晴らしいものだった。

 TI大学病院の主治医たちとは、雲泥の差。まるでゴキブリとアゲハチョウのよう。人間の質が違う。患者、家族へのケアも治療のうちだとしみじみ感じる。


 幸いにも腫瘍は、脳と脳の間、髄液などが溜まっているような隙間にできているものらしく、手術による大きな後遺症はおそらく回避できるのではないかとのこと。ここが肝心だ。

 ただ、脳幹、視床に近い部分に癒着があることが考えられるため、ここをどのくらい切除できるかが分かれ道のようだ。その点は、S島先生、M田先生の腕にお任せするしかない。
 そのあとは、おそらく放射線、化学療法の治療をしていかなくてはならないと思われる。いずれにしても長期戦は間違いない。

 「敵は何であれ、修ちゃんは必ず治る!」と昭治くんがくり返し言ってくれること、私も心からそう思いたい、、、そうならなくてはならないと強く念じる。

 説明会の後、私の父の号令で家族全員のコンセンサスがとれ、全員が異議なくここで治療を受けることに同意。意識の一致がなければ大変なことになる。
 父は、皆の気持ちを和やかにまとめ、私達の生活のため、金銭的な面、精神的な面を緩和できるよう、皆の協力を仰いでくれた。頼りになる偉大な父だ。


 今日まで、どんなに頑張っても前向きで希望を持つ気持ちになれなかった、というか前向きになれる材料がひとつも無かった。今日のS島先生のお話で、とても気持ちが前向きになれたし一筋の希望も手に入れた気がする。

 もう後にはもどれないし、やるしかない、戦うしかない。
修ちゃんもようやく壇上に上がれた気分だろう。

 帰って、芽生の伸び伸びとした寝姿を見て、肩の力が抜けた。愛おしい愛おしい娘だ。
 キティちゃんのパジャマがよく似合う。