今後の方針

 朝から芽生とリンちゃんは仲良しで、同じ衣装用スカートをはいてふざけたり、私の膝に二人でのっかったりして遊んでいる。ずっと遊んでいたいが、後ろ髪引かれる思いで会社へ急ぐ。

 夕方、S島先生から手術の病理結果と今後の治療方針の説明がある。千恵ちゃん、義父、義母、ヒロミ、父、兄が集合、遅れて昭治くんもやって来る。相変わらず大人数なので、大きな会議室に案内される。

 修ちゃんは時折、痙攣の発作が始まるので、安静にしている。一日に何度か痙攣を起こすらしく心配だ。

 S島先生より術後の経過、後遺症、病理の結果の説明。術後経過は順調、痙攣は手術の後遺症でじきに治まってくる、目の症状、視界の狭さ、視点のズレなどは、左後頭葉を切ったことによる症状で、だんだん良くなるとのこと。時期は個人差があるが1ヵ月もすれば回復するようだ。
 とにかくこんなに大手術をしたのだから、脳が腫れたりいろいろと難しいらしい。当然のことと納得する。

 腫瘍については、悪性のもの、残念ながら悪性度の高いものと決定できると。今後は放射線治療とテモダールいう薬を併用していく。先生の手術の感覚では腫瘍が柔らかく、そういうタイプはわりと放射線がききやすいらしい。また、テモダールも近年治療成績を上げている薬とのこと。
「効くひとには、すごく効くんです。でもそれはやってみなくては分からないのが正直なところです」と。
 賭けるしかない。願うしかない。
 修ちゃんは普段から薬がよく効くタイプだし、きっと!と安直に考えてしまう。

 兄は、先端医療について具体的につっこんだ質問をするが、先生は全ての質問に即座に誠実に答える。S島先生の治療方針が今は最善なのだろうと兄も納得する。
 説明が終わり、待ち合い室で家族皆でいろんな話しをする。皆といると本当に心が安らぎ、不安が解消される。いつもそばに一緒にいられたらなぁとぼんやり思う。
 昭治くんの持ってきてくれたフコイダンも薬剤科に見てもらうことになる。

 10階の眺めのいい待ち合い室は、東京タワーとスカイツリーが両方見える絶妙なスポット。一方には青色に電飾された東京タワーが、一方には黄色く輝く満月が、印象深い夜景が目の奥に残っている。