変わらぬもの


 午後をまわり、病院へ行く時間が近づいてくると、気持ちがそわそわしてくる。いいも悪いもいろいろな感情が渦巻いて。ネガティブに大きく支配されることもよくあり、大きなため息で、出てってもらおうとするがなかなか難しい。

 今日も、ぼんやり憂鬱を感じていたところ、突然、高校からの親友サチエが、私に会いに来るとの連絡が。嬉しくて涙がでる。
 修ちゃんのお見舞いはまだ遠慮してもらっているのだけど、私のお見舞いといったところだ。彼女はわたしがピンチのときは、いつもなり振り構わず飛んできてくれる、スーパーウーマンだ。素晴らしい親友。

 病院のロビーで少し話し、私は、修ちゃんのところへ。サチエは私が帰るまで待っててくれると言っている。一児の母なのに、忙しいはずなのに。なんていいヤツ。

 今日から放射線治療とテモダールを飲む治療が開始された。今日のところは、見たところ様子は変わっていない。薬のせいか、ぼんやり浮かない表情をしているが、午前中の放射線治療と、リハビリに通う事で、生活のリズムを付けていってほしい。

 放射線治療の副作用を先生に突っ込むと、
「のぼせる感じですかね。」と。のぼせるのか。。。
 テモダールの副作用は、主には吐き気とのこと。書面的にはいろいろあるけど、願わくばこのくらいに留まってほしい。そして、これらの治療がどう効果を発揮するかにかかっている。

 修ちゃんは、もものジュースを美味しそうに飲み、芽生報告をすると、笑顔がみられる。何よりだ。

「ところで、まり子のほうは、どうなのよっ」と聞いてくる(ほぼ毎日)。
どうなのよって、あんたのほうがどうなんだ!と思いながら、
「まぁ、元気だよ」と。
「病人が病人つくっちゃうんじゃ、困るからな。そのへん調整してくれよな」と。
 今日は少し浮かない表情をしているが、私を気遣ってくれる気持ちはいつも変わらないのだ。優しい人。

 先生や看護師さんといろいろ話していたら遅くなってしまったが、サチエはロビーで東京タワーを見ながら待っててくれた。放課後に友達を待ってる高校生みたいに。いつまでも変わらぬ友情に胸が熱くなる。

 少し遅目に帰宅すると芽生は、バンザイのポーズで熟睡してる。
 ロンドンオリンピックで湧く昨今、
「今日、芽生が「ロンドン!」って言ったのよーー」と母が興奮気味に言ってきた。
 驚き! 芽生なりにオリンピックを楽しんでいるんだな。