熱狂的なファン


 朝、芽生の様子をじっと見ながら目を覚ますのを待つ。そのうち眠そうに目をパシパシしながら開けると、私がいることに驚き、「ママァー」とニッコリして言ってくれる。
「ハロー! メーイー!」と答える。
 そして「ママァー、、、ジィジィー、、、バァバァー、、、トウッ」とひとりずつ確認するように言っている。しばらくバアバとふたりだったのが、やはり寂しかったのかなぁと切なく思う。

 それでも、すぐに元気に起き上がりトストスと足踏みしたりしている。朝ごはんのときもご機嫌でニコニコしながらよく食べ、たまに椅子の上に立ち上がってふざけたりする。ママがいることが嬉しそうに見えて、私もとても嬉しくなる。

 出張の疲労を抱えながら出勤し、同僚に出張報告をしつつお喋りを楽しむ。パッパと仕事を片付け、少し早めに病院へ。

 病室を覗くと、修ちゃんがベッドから「オー!」といって起き上がる。居ないあいだの報告とおり元気そう。顔色もいい。
 出張で疲れただろうと労をねぎらってくれ、私もなんだか急に力が抜け、心底ホッとする。
 視点の合わなささは相変わらず悩ましいようだけど、それ以外は調子がよさそう。「放射線は今日で9日目だ」と、数字の強さも発揮してるし。安心する。

 イソネエにいただいた熊野のヤタガラスについて盛り上がり、ごりやくがあるよう枕の下に入れるか、寝床に入れるかといろいろ画策したが、シーツ替えのときに無くなるといやなので、ベッドサイドに貼ってある芽生の写真コーナーに熊野牛王符も加えることに。

 しばらくしてヒロミが来て、三人でスイカを食べる。いつものように楽しく談笑しながら。

 そのうち主治医のS島先生が回診に来る。私も修ちゃんも一気にテンションがあがり満面の笑みで先生迎える(カラダは前のめりに)。
 修ちゃんはS島先生のことが本当に大好きで絶大な信頼を置いている。私も同じく。
 私達の異様な盛り上がりにヒロミが
「ふたりとも本当に先生が好きなんだね」と。「もちろん」です。
 もはや私たちは、S島先生の熱狂的なファンといった感じ。先生が「きっと良くなりますよ」と言えば、本当にそうなるような気がする。宗教的にも思えるが、これほどの信頼関係が病気治癒につながる礎となるはず。

 いつもより早めに帰り、久しぶりに芽生と一緒にお風呂に入る。夏の間は保育園で水遊びをしているので、シャワーを浴びるのが大好きになっている。
 ぴちゃぴちゃ水をかけると大声を出して喜ぶ。私がシャンプーをしながら頭を低くしていると、下から顔をのぞきこんで「ママー」と言う。
 やること、言うこと、表情全てが可愛らしくて仕方がない。