順応
9月15日(土)
朝からトッチャの外泊お迎えに、芽生とバアバとはりきって出かける。
芽生はトッチャが病院で暮らしていてたまに帰ってくることを、理解しているようで、病院に着くなり、「トウッ、トウッ」と病室に向かって先頭を切って歩いている。
仲良しの看護婦さんに「えらいね〜、分かるんだね〜」と言われて、まんざらではないような顔つきでますます得意気。健気で可愛らしい。
病室の前までくると「トウーー!」と呼んでみる。
窓際の奥から「はーい。ちょっと待っててねー」とトッチャの声。
わくわくしながら待っていると「おー、メイ〜」とトッチャが現れ、芽生を抱き上げる。芽生は足をパタパタさせて喜んでいる。素晴らしくいい眺め。
入院した頃は、(当たり前だけど)わけも分からずキョロキョロし、たまに泣いたりしていた芽生も、すっかり私達親子の生活が家と病院にあることを、芽生なりに理解している。何も言ってきかせなくても順応していけてること、感心するばかりだ。
昨日は放射線治療、テモダール治療の効果を測る入院中最後のMRI検査。毎度毎度のことだけど、私は不安と希望とでめちゃくちゃな精神状態で一日を過ごす。不安定さの抜け道を体得したいところ。
夕方、千恵ちゃん、お義母さん、兄、夫と私で、S島先生から結果を聞く。仲良しの看護婦さんも一緒。
結果はずばり「良好!」。手術前、前回(中間検査)、今回と画像を並べて見せてくれた。素人目に見ても、小さくなっている。良かった!何より良かった。
家族みんなで喜ぶ。S島先生もにこやかに、看護士さんもにこやかにしている。
いよいよ退院に向けての注意事項や日常生活のこと、今後の治療のことなど詳しく聞く。残された腫瘍が頭の中にあるかぎり、治療は続けていかなくてはならない。爆弾を抱えての生活。
これから長期に渡って根気と精神力、経済力が必要とされるのは間違いない。
それらをキープしながら、病状もキープしながら、生活もキープしながらというのは、言い切れないほどの不安があるし、一筋縄ではいかないことは大いに想像できる。
だけど、以外と実際にその生活が始まってみると、ちゃんと順応して、楽しいことも見つけて、笑って過ごせるはずだ。
誰より芽生がそのお手本を見せてくれている。