潜入


 先日、夫は月に一回のテモダール投与治療が終わったが、体調は副作用のためか、行ったり来たり。もちろん薬を飲まないということで精神的には楽そうだが。

 平日は家事をしたり、散歩をしたり、エコパオさんに電車に乗っていったり、近所の整体に腰を揉んでもらいにいったりと、なんとなしに課題を作って過ごしている。
ただ、目を使う事はなるべく避けているよう。

 土曜の朝、芽生は『Rubber Soul』のジャケットを見ながら、ジョージを指差し「タロウさん」と言っている。延長でリンゴを指差し「ラボさん」と。「ジョーさんは?」と聞くと「Rubber Soul」のモコモコしたサイケデリックなロゴを薄笑いながら指差す。
 狙っているのかふざけているのか、、、、、芽生の想像力は私達の予測を遥かに越えている。

 土日はそのタロウさんとジョーさんがそれぞれ修ちゃんの様子を見に来てくれる。楽しく穏やかに過ごす午後。
 あれこれうんちくしながら音楽を聴き、冗談を言い合い大いに笑い合うが、愚痴も悩みも不安も聞いてもらう。本当にありがたい友情。

 タロウさんが持ってきてくれたCD、ロキシーやペンギンカフェや、ピアソラやブライアンイーノや細野さんやマリア・マルダーやジェシーハリスなんかを聴くが、モンクの『Monk in France』が一番修ちゃんぽく、しっくり落ち着く。
 
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 今日は芽生の保育参観日。
 変装をして保育園生活に潜入し、子供たちの日常を覗き見するというなんともスリルのある興味深いイベントだ。
 朝、芽生を送りに行き、そのまま夫や私、他のお母さんたちも変装グッズに身を包み、芽生たちの部屋に不自然に居座って観察する。
 子供たちは、何か不思議な人がいるなぁくらいで、ぜんぜん気がつかない、、、と思いきや、
芽生が夫に向かって「トッチャ?」と言ってくる。夫は焦り、帽子で顔を隠し目をそらすと、芽生も違うかな?というような顔をして、そのうち気にしなくなった。

 芽生の保育園生活は、本当に芽生らしく、伸び伸びとよく遊び、よく食べ、健やかそのもの。家では見せない保育園生活での規律もちゃんと身についている。えらいなぁと感心するばかり。


 潜入参観の途中、夫は疲れたようで先に帰り、私はそのあと、担任の先生と面談。

 「芽生ちゃんや子育てのことで何か困っていることはありますか?」という質問に、よくよく考えてみる。そして、
 「芽生について、特に困っていることはありません。私にとって子育ては一番の癒しです」と答えた。
これは綺麗ごとではなく、本心。

 今、私達の気持ちを明るく元気にさせてくれ、笑って暮らす事ができるのは、誰よりも芽生ちゃんのおかげなのだと、ダダをこねても泣いても笑っても、全部が可愛くて仕方がありませんと、
そう先生に伝えると、目を潤ませ素敵な笑顔で深くうなずいてくれた。

 夕方、芽生と一緒に家に帰ると、トッチャがプリンを作って待っててくれた。
芽生は「プリン!プリン!」と両足でピョンピョン跳ねながら大喜びしている。
無邪気に興奮する姿に、私も夫も笑みがこぼれる。
 食いしん坊の芽生は、すぐに自分のプリンをたいらげ、もっとくれくれと大騒ぎ。
 いつものことながら、にぎやかで何より。