音楽好きの遊び


 今朝は久々にたっぷり寝て、芽生もトッチャもママも無理なく起きる。ゆっくり朝ごはんを食べてゆっくり仕度をし、選挙へ。

 投票の間、芽生がずっと右手を離してくれないので、私は、左手で踊るような汚い字で清き一票を投じる。結果はやはり死に票となる。
 いったいどこにマジョリティたる人がいるのだろう。私の周りには一人もいないのが不思議だ。

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 今日は、バンド仲間が集まる忘年会、我が家にて。
 恒例の音楽持ち寄りで、今回のテーマは「ザ・ブラックミュージック」。いつものように修ちゃんが直感で決め、あらかじめアナウンスする。

 午後、芽生がタイミング良くお昼寝をしてくれたので、私はパーティ料理をせっせと準備する。
 仕事仲間のムーさんがプレゼントしてくれたアン・サリーのアルバム『moon dance』を聴きながら。これがまた素晴らしいアルバム。清らかで自由な歌声が染み渡り、いい気分で仕度もはかどる。

 夕方みんなが集まるのを待っていると、芽生が部屋の窓から新月が見えることに気がつき、「お月さまだー! お月さまこんばんわー」と叫んでいる。
 見ると、ちょうど窓から綺麗な新月が。空にはまだ少し夕焼けが残っていて、グラデーションの夕暮れ空と新月がまるで絵画のよう。ロマンチックな光景にしばらく親子3人でお月様を眺める。芽生が「キラキラ光る〜お空の星よ〜」とちょっと小さな声で歌っているのが素敵なBGM。

 しばらくして、タロウさん、ミュウ、ミカちゃん、ラボが集まる。芽生は少し恥じらいながらも、たちまちご機嫌でニコニコ愛想をふりまき、みんなに抱っこされたりホッペを触られたり、アイドル振りを発揮している。完全にマスコットだ。
 
 乾杯してお酒も食事も進んだどころで、「ザ・ブラックミュージック」選曲披露会。
 修ちゃんはスカパラに始まり、エリックドルフィの「Out to Lunch」、マイルスの「パンゲア」をもって、自分の考えるブラックミュージック論を熱く語る。
 タロウさんはArt Ensemble of Chicagoとかマニアックを発揮しつつ、「Black Night」でつなぎワンクッション、しっかり笑いをとってJBへとつづく。JBに合わせて芽生が変な踊りをして益々盛り上がる。
 私は大御所、スティービーワンダーの「Superstition」とダニーハサウェイのライブ「What's going on」で本気を見せて、KUBOTAの「流星のサドル」も紛れさせる。
 ラボはシカゴソウルとかレアグルーブとか上質なスウィートソウルを次々と紹介してくれる。これがまたマニアックで皆をうならせる。
 ミュウは我が家のCD棚からプリンスの「1999」を取り出し、ブラックミュージックを最高に盛り上げたところで、なぜかクラフトワークの「ヨーロッパ特急」に。みんな妙に落ち着き、ミニマルで爽やかな気分になる。
 芽生とミカちゃんは、すっかり仲良しで、おかまい無しにアンパンマンの歌を歌ったり、音楽に合わせて踊ったり自由に自由に遊んでいる。
 
 みんな、個性が強すぎる。そして楽しすぎる。

 今朝、私が節約して暮らすのはなかなか大変だなぁともらしていると、修ちゃんは「俺はお金を使わなくても、音楽持ち寄って聴いてるだけでじゅうぶん楽しい遊びなんだ」と声高に言っていた。

 そう、これは昔からずっと続いている、友人たちとの楽しい遊び。私達は何も変わっていないし、これからも変わらないのだ。こればっかりは。