カニーカミュカミュ

 年末年始は私の実家で過ごす。

 夫の体力が帰省ラッシュに耐えられるか心配もあり、加えて芽生もまだ何かと手がかかるので、電車での帰省は断念。行き帰り、私の父が車で、送り迎えしてくれた。父はもう高齢といえる歳なのに、あまりにものタフさに頭が下がる。
 渋滞はあまり無かったけど、途中、雪道のためノロノロ安全運転。そして、パーキングごとの芽生の発散に付き合いながら、約10時間のロングドライブだった。

 初めて触る雪に芽生は大興奮で、その小さな手で恐る恐る触ってみては、にんまりと笑顔を浮かべ、ギューギューと雪を踏みしめてはにんまりと笑顔を浮かべ、そのうちキャーキャーと喜声をあげながら夢中で遊ぶ。
 初めてのことに対する、好奇心と恐怖心の入り交じった反応がいちいち可愛らしい。そして、その新しいことにどんどんに慣れて、自分の世界に取り入れて行く。
 芽生の過ごす毎日は、吸収と冒険の連続なのだ。


 年越しとお正月の間に、親戚の大人や子ども達にたくさん会ったせいか、芽生の語彙は爆発的に増え、わりと複雑な文章も話せるようになった。
 そして、なぜか急に「カニカミュカミュきゃりーぱみゅぱみゅ)」と言い出す。「こんなことも言えるもん!」といった得意気な顔で。その顔がとっても可愛い。いつの間に覚えたのか、、、謎だ。
 また、主張も強くなってきていて、「イヤなのー」を連呼することも度々。取りあえず言ってみてるのかな、という気もするが。

 私達は、芽生の発する一言一言に、驚くことも多く、たびたび大笑いする。一言も聞き逃したくないくらい、次に何を言うのかが楽しみなのだ。


 そんな感じで芽生の成長を楽しみながら、田舎でゆっくり過ごすが、北陸の暗い空の下、時間もあるせいか、私は、ふと、あれこれと考え込んでしまう。思いは複雑。
 無心にただゆっくりと休養し笑っていたいけど、隙間に邪念が割り込んでくる。先々への不安と楽観が行ったり来たり。暇があるとそんなもんだ。


 芽生はここのところ、
「そうさ、うれしいいんだ、生きるよろこび♪ たとえ、むねのキズがイタんでも〜♪」
と、アンパンマンの歌を熱唱する。
 ものすごく一生懸命でたどたどしく、その “歌詞” を歌い上げることに、大人たちは大爆笑。

 鬱屈としがちな私の心境にも、その歌声が響き、気持ちのあれこれが払拭される。
「生きるよろこび」か、、、。アンパンマンってやっぱりすごいな。

 初詣で引いたおみくじは、夫も私もなんと「大吉」。
素直に喜びたいところだけど、昨年も夫は「大吉」をひいていることもあり、少々複雑。まぁ、でも「大吉」のお陰で、命拾いをしているとも考えられるし、モノは考えよう。


 きっと今年も、芽生の歌う「生きるよろこび」が実感できる年になるだろう、と前向きに「トとマとメ」は行く。