願掛け


 節分の日、トッチャは鬼のお面をかぶって、芽生の前に立ちはだかると、芽生は何か思いついたような顔で自分の部屋に走って行く。恐くて逃げたのかな、、、と思いきや、ピコピコハンマーを手に「エーイッ」と鬼めがけて突撃してきた。そして、ピコピコパンパンとハンマーで鬼退治。芽生の判断力と勇敢さに驚き、大笑い。
やはり芽生はただ者ではない。

 節分には毎年、恵方巻きを食べ、柊にイワシの頭を刺して魔除けをする。今年も恵方巻きを南南東に向かって食べ、柊を玄関に掲げた。イワシの頭は臭いが近所迷惑なので刺せずに、丸干しを焼いて食べた。
 明日の外来に向けて願をかけ、準備万端。

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 今日は月一回のMRI撮影と外来診察。

 夫はなぜか黄色がラッキーカラーだと思っていて(理由はなんだったか?)、毎回外来には黄色いTシャツを着ていく。友人のマンゴー(イラストレーター)作の“高尾山のロープウェイ”が描かれた黄色いTシャツを必ず。すごく味のあるいいTシャツ。高尾山ってところが夫もお気に入り。

 私も外来の日は、いつもよりオシャレをして出かけるよう心掛けている。もし万が一何かあったときにも、オシャレにしてたほうが、まだ少し機嫌よく、テンションが高くいられるのではないかと、着るもの、身に付けるものに頼りつつ、特別に気を遣う。そういうこと、結構大事だと思う。
 ということで、最近気に入っているドット柄のスカートに先日買ったスウェードのショートブーツを合わせて、何度も鏡の前でチェックする。

 結果、先月よりまた少し腫瘍が縮小傾向! ヤッタ!
 
 芽生の鬼退治も、柊の魔除けも、黄色いTシャツも、私のオシャレも、幸運を導いたか。
 やっぱり“願掛け”はバカにできない。

 願いも叶い、「よしよし!」とふたりで喜んで帰ると、芽生が保育園で顔面を強打したらしく、右の眼の下が見るもおぞましい青アザに。
 本人はケロッとして、いつものように高らかに歌いながらイソイソ遊んでいるけど、私も夫もそのアザを見て失神しそうになる。でも、眼じゃなくて本当によかった。
 
 願掛け威力も頼ってばかりもいられない。何が起こるか分からないのが現実。
とはいえ、不幸中の幸いを導いている芽生は強運だ。ピコピコハンマーでしっかり鬼退治したところだし。