44を抜け出せ


2月27日(水)

今月もまた外来診察の日がやってきた。時がたつのが早い。

 今日は検査時間が早いので、早朝から出かける。
いつものように病院までのドライブは、唯一夫婦ふたりでくつろげる時間。

「まり子が一番好きなのはこの辺の時代のこの感じなんじゃないか、と分析したんだ」とビーチボーイズの『スマイリー・スマイル』を用意してくれている。
「確かに好きだけど、ちょっと退屈になるね」と、私は粋がったことを言ってみたり。
「ならば、これは?」と私が気に入りそうな音楽を、次から次へとセレクトしてくれる。タロウさんからいただく音楽定期便CDもまぜながら、とっても楽しいドライブだ。


 少し早めに到着し、採血、MRI検査と順序良く進む。
 毎度のことながら結果を知る前は不安と緊張で、きまって腹痛にみまわれ、私も夫もやたらとトイレに駆け込む。精神不安が及ぼす、身体の正直すぎる反応だ。

 診察室に呼ばれると、S島先生が明るい表情で嬉しそうに座っている。この人もとても正直な人。
 写真を見ながら、「いいね〜。ほらっ、この部分、小さくなってるよ!」と。
 今月もみごとにクリアした。いや、クリアし一歩前進した感じ。
 このところ夫は自覚症状的には、あまりかんばしくないのだけど、素人目から見ても明らかに小さくなってきている腫瘍の画像を見て、俄然元気を取り戻す。私も同じく。

***

 そして、今日は、夫の45歳の誕生日。
「44を抜け出せたぜ〜」と命からがら逃げてきた兵士のようなことを言って喜んでいる。

 早めに芽生をお迎えに行き、トッチャのお誕生日祝いをする。
バースデーケーキのロウソクに火をつけると、芽生がお得意の「ハッピーバースデー♪」を歌い出す。
保育園で毎月誕生会があるので歌い慣れているせいか、少しこなれた感じで歌う芽生の姿が、なんだかおかしくて笑ってしまう。

 トッチャは、芽生にバースデーソングを歌ってお祝してもらったことに、本当に本当に嬉しそうで、「トッチャ嬉しいよ〜!」と男泣きする勢いだ。
 一方、芽生はトッチャの感動をよそに、ロウソクを早く吹き消したくてたまらず、ケーキのイチゴを食べたくてたまらない様子。
 芽生のクールとトッチャのホットが行き交う “父と娘の姿” がたまならなく滑稽だ。

 何はともあれ、トッチャ、45歳おめでとう!