ピクニックへ


3月2日(土)

 昨夜から、芽生が発熱し、今朝は慌てて病院へ連れて行く。芽生自身はいつものようにいたって元気。

 芽生はかかりつけの小児科の先生が大好きで、先生の前で、自らシャツをまくり上げ、胸とお腹をつき出し、聴診器をあててもらう。「はい、つぎは背中!」と、くるりとまわって、またシャツをまくる。
 先生と看護婦さんに「メイチャン、エライね〜」と言われ、「エヘンッ!」な感じで得意顔。


***

 夕方、大好きなシンガーソングライターのジョーさんが企画する、『三月のピクニック』というイベントに夫と下北沢に出かける。
 ライブを見に下北なんて、すごく久しぶりだ。最近はめっきりライブとか行きたかがらない夫も、ジョーさんなら久々に見たいなと。

 駅を降りると、相変わらずの狭い路地で行き交う若い人の波に、圧倒されてしまう。
 自信に満ちあふれた人々、傍若無人さ、偏見だけど、ちょっと恐い。以前はそんなこと全然思わなかったのに。

 そんなことを思いながら夫を見ると、夫もこの人の波に少し恐れを抱いているよう。不自由な目で、ぶつからないよう、真剣な顔つきで歩いている。厳しいリハビリ。

 ジョーさん演出のライブは、阪本正義さんとジョーさんの世界観と才能の絶妙なコラボレーション。ピクニックと称した小劇のような演出で、そのうたやことばやギターやピアノの世界に、すっかり惚りこまれる。夫もじっくり味わっている様子。
 私は、久々に聴くジョーさんのうたと詩の世界が琴線にふれ、涙が止まらない。

 ライブが終わり、ひと気も少なくなった下北で、ラーメンを食べる。昔よくライブ帰りにそうしたように。
 少しずつだけど、以前の私達の休日の楽しみ方も戻りつつあるような。

 機嫌良くふたりで帰宅すると、「芽生ちゃん、38.5度まで上がってるわよ」とバアバに言われ、ハっと現実に戻る。
 
 でも、その寝顔は、穏やかで可愛らしい。
 冷え切った手で、芽生の発熱した小さな手足を触ると、ピクッと驚く。わたしは芽生の体温で癒される。