合点


4月25日(木)

 何かと変化に敏感になる昨今。

 芽生は日々成長、変化する。
 言語の習得も目覚ましく、複雑な文も話せるようになってきている。大人の話しもちゃんと聞いていて、私たちが神妙に話し込んでいると、
「ママとトッチャ〜、なにのはなし?」と横槍を入れてくる。少ししかめた顔つきで。

 誰が好きとか、これが好きとか嫌いとか、自我もしっかり目覚めている。
 目覚めるといえば、毎朝、「目覚ましジャンケン」の勝負をテレビに向かって挑み、一喜一憂する。真剣勝負。


 
 夫についても、私は、毎日様子を気にしながらで、少しの変化にも敏感になっている。
 そして、ここ数週間の夫の著しい変化は、見逃すわけもなく、とても気がかりになっていた。

 歩行がふらつき、よろめくことも多く、少しの移動でも壁や机に手をつき何かを頼りにバランスを保つ。そして、寝た姿勢から起き上がるとき、コロンと転がる。わりと頻繁に。
 体力作りに励んでいたウォーキングやジム通いも、怠りがち。

 夫の脳に、何か異変が起きているような気がしてならず、でも、きっとそれは、手術の後遺症が重くなってきているか、または、重なる抗ガン剤治療の負担が大きいからだと思い込んでいた。



 だが、その変化の理由は、腫瘍の転移によるものだと、昨日の外来診察で判明した。原発とされている視床とは離れた、小脳のはじっこ。
 1ヵ月前の検査では、見受けられなかったものが、明らかに分かる病巣となっていた。

 夫のバランスの悪さは、小脳の司る機能のあきらかな障害で、その腫瘍による影響だと顕著に診断され、
「あぁ、なるほどね、、、」と合点がいった。これほどに気分の悪い納得事はない。

 超超超不幸中の幸いと言えば、発見が早かったこと。まだ小さい。小さいうちに病巣を摘むべきと、緊急に手術をすることになった。連休明け早々に。


 敵は予想以上に手強く、惨く。本当に憎い。
 でもやるしかないと、また、無理にでも奮い立たせることになった。
 もう少し、ゆっくり休ませて欲しかったのに。


 
 それならば、手術の日までせっかくのゴールデンウィーク、景気づけに思いっきり楽しもうじゃないかと。
 友だちに声をかけ、計画を立てはじめる。

 手術までの短い助走期間、一層、笑って過ごそう。