踏み込む
8月16日
アバスチンを試してみるとはいえ、
主治医の先生方はそれを強く薦めているわけではない。
重篤な副作用も詳しく説明されると、
迷うところもあり、今一歩踏み込めなくもある。
修ちゃんはやる気ではいるけど。
その見解を聞くためにも、
アバスチンを治験の段階から自由診療まで
数多い症例を持っているIK病院に
昭治くんとセカンドオピニオンに行ってみた。
*
古めかしく荘厳な研究所の奥に、
近代的な研究所付属病院がある、不思議な建物。
予約の時間を過ぎてもなかなか呼ばれず、
そのうち、人のよさそうな先生が診察室から顔を出し、
「今、画像と病理結果を検討しているので、
もうちょっとお待ちください。少し時間がかかります」
と声をかけてくれる。
じっくり検討してくださいと思いながら、引き続き待つ。
いよいよ呼ばれ、二人の専門医の意見を聞く。
確かに、重篤な副作用もあるかもしれないし、
浸潤が進んだ病状の場合、それほど効果がないかもしれないし、
腫瘍が消えていくというようなことも無いけれど、
一時的にでも、頭の腫れや腫瘍の増殖が抑えられ、
状態が良くなるかもしれないと。
一度は試してみては、と。
私と昭治くんは、背中を押され、
すぐにでも試そうと意見が一致した。
*
昭治君に駅まで送ってもらい、
私はその足でメイの待つ富山の実家に向かった。
金沢駅に着き、改札付近にくると、メイの大きな歌声が聞こえてくる。
たぶん、あんぱんまん。
私は、涙ぐみながら急いで改札を出て、
メイのところに走った。
メイは「ママぁ〜!!」と抱きついてくる。
そして、
「トッチャは?」と真っ先に聞いてくる。
私は、とっさに、
「トッチャはね、、、お仕事だよ。」
というと、バアバに、
「メイは、トッチャが病院に行ったこと、分かってるわよ。」
と言われる。
もはや、適当にごまかせる年頃ではない。
感受性が強く、とても優しいメイだから、なおさら。