踏み込む


8月16日


アバスチンを試してみるとはいえ、
主治医の先生方はそれを強く薦めているわけではない。
重篤な副作用も詳しく説明されると、
迷うところもあり、今一歩踏み込めなくもある。
修ちゃんはやる気ではいるけど。


その見解を聞くためにも、
アバスチンを治験の段階から自由診療まで
数多い症例を持っているIK病院に
昭治くんとセカンドオピニオンに行ってみた。



古めかしく荘厳な研究所の奥に、
近代的な研究所付属病院がある、不思議な建物。


予約の時間を過ぎてもなかなか呼ばれず、
そのうち、人のよさそうな先生が診察室から顔を出し、
「今、画像と病理結果を検討しているので、
もうちょっとお待ちください。少し時間がかかります」
と声をかけてくれる。
じっくり検討してくださいと思いながら、引き続き待つ。


いよいよ呼ばれ、二人の専門医の意見を聞く。
確かに、重篤な副作用もあるかもしれないし、
浸潤が進んだ病状の場合、それほど効果がないかもしれないし、
腫瘍が消えていくというようなことも無いけれど、
一時的にでも、頭の腫れや腫瘍の増殖が抑えられ、
状態が良くなるかもしれないと。
一度は試してみては、と。


私と昭治くんは、背中を押され、
すぐにでも試そうと意見が一致した。



昭治君に駅まで送ってもらい、
私はその足でメイの待つ富山の実家に向かった。


金沢駅に着き、改札付近にくると、メイの大きな歌声が聞こえてくる。
たぶん、あんぱんまん。

私は、涙ぐみながら急いで改札を出て、
メイのところに走った。


メイは「ママぁ〜!!」と抱きついてくる。
そして、
「トッチャは?」と真っ先に聞いてくる。

私は、とっさに、
「トッチャはね、、、お仕事だよ。」
というと、バアバに、
「メイは、トッチャが病院に行ったこと、分かってるわよ。」
と言われる。


もはや、適当にごまかせる年頃ではない。
感受性が強く、とても優しいメイだから、なおさら。