白いテープ


8月19日


朝、メイは久々に我が家の布団でゴロゴロしながら、
いつも隣に居るはずの大きなトッチャの姿がなく、
「ママぁ、トッチャがいないと寂しいね」
と小さな声で言ってくる。

私はメイをじっと見つめ、「そうだね。。。」と。
遠い目になる。


今日はメイを連れて病院へ。
メイはトッチャに会うのは約一週間振り。


病室に入ると、メイはサンダルをパタパタさせてトッチャに駆け寄る。
ベッドサイドにちょこんと立ち、顔をのぞき込む。
メイの顔は、ちょうどベッドの位置と同じくらいのところ。


トッチャは依然、頭痛と吐き気がおさまらず、身体を起こす事ができないが、
メイの顔を見て、急ににこやかに、顔色が良くなる。
何よりもの特効薬。


メイはトッチャの人差し指に巻いてある白いテープが気になり(脈拍などを管理するもの)、
「トッチャ、指が痛いの?」と不思議そうに尋ねる。

小さいメイにとっては、トッチャの病気が脳腫瘍だということは分かるわけもなく、
目先にある白いテープが、トッチャを苦しめている原因だと推測しているのだ。

原因はなんでもいい。
メイなりに、トッチャを気遣う気持ちが
とてもとても健気で、私は涙が溢れてきた。


夫は、お見舞いに来てくれたジョーさんともしばし談笑する。
穏やかなジョーさんと、言葉少なながら、楽しそうに。


ジョーさんとメイとバアバが帰ったあと、
「メイに会うと元気になるでしょ?」
と私がきくと、
「元気になるっていうか、元気にならなくちゃって思う」
と夫は答える。

本当に、その通りだ。
きっと、トッチャならやれる。早く家に帰ってこい!


その意気込みで、明日のアバスチン治療に備える。