ペコちゃん焼き

 

9月4日(水)

第2回目のアバスチン、効果は出ているのだろうか。
この数日彼の様子を見るかぎり、画期的なことはほとんどなく、
依然としてぐったりし、頭を抱えて眠っている。

前回の一時的な快復を期待していただけに、その姿に消沈する。
過度な期待を持つこと、だんだん消極的になってくる。



連日、会社の社長さんや同僚の皆様が代わる代わる夫のお見舞いに来てくれている。
久々に会える喜びもあるだろうが、彼の様子の変わりように困惑もあるだろう。

仕事では、ムードメーカー的な役割だった彼のエピソード、武勇伝を面白ろおかしく皆で語ってくれる。
頭の上でそれを聞きながら、夫も時々、懐かしそうに笑い、口を出す。
同僚の皆さんも、そんな夫の様子を嬉しそうに見守ってくれる。
夫はどこでも、ファンを作るタイプなのだ。


***


今日は、頭痛が激しく、どんどん増してくるようで、強めのモルヒネ系鎮痛剤を処方された。
その薬が効いたのか、頭痛が緩和され、穏やかな表情になる。
意識は少しぼんやりとしているが。


私が席を外しているあいだ、お見舞いに来てくれたユキちゃんと狩生くんとも、久しぶりに楽しくロック談義をしていたよう。


そして、壁に貼り付けた芽生の拡大写真を見ては、終始ニコニコしている。
「修ちゃんって、まつ毛が長くて、芽生に寝顔が似てるね!」と、私は大サービスのお世辞を言うと、
可愛い顔をしてポーズをとる。

さらには、ヒロミとマンゴーと私の女性陣に囲まれていることをいいことに、
ペコちゃんみたいに、ベロを横から出してアピールする。


“ペコちゃん焼き” に似てる


痛みから解放された夫の表情は、柔らかく、素敵な微笑みで、
久しぶりに、その顔が見れて、
私は幸せな気持ちになった。