9月5日(木)

約4週間振りのMRI検査が行われた。
先月の急激な腫瘍の広がりに対し投与した新薬アバスチンの、その効果を確かめる。


輪切りに撮影された画像を見ながら、主治医の説明を千恵ちゃん、たかお、ヒロミと聞く。
主治医は過去の画像を見せながら、これまでの経過など丁寧に細やかに説明する。妙に、ためながら。
そして、いよいよ今回の画像を映し、見た瞬間、私は涙が溢れ、号泣した。


白く映し出された腫瘍群は、さらに浸潤範囲を広げ、小脳の陣地大半を征服しようとしている。まるで碁盤上の白い碁石のように、脳幹を取り囲もうとしている。
じわじわと、いやらしく、地に足つけて。


第1回目のアバスチン投与は、残念ながら効果がみられてないのではないか、、、との見解。まぁ、見れば分かる。
第2回目の投与については、来週の検査で判断すると。その結果次第では、治療を今後続けて行くか否かという選択、そして、緩和ケアにシフトして行くか否かという選択になる。


夫は、主治医からのその事実を受け、ひどく辛そうな顔になり、
「死にたい人間なんか、いませんよ」
と語気を荒げて、言い捨てる。

彼の不安、悔しさ、無念さを思うと、私は声が出ない。



ずっとそばに居たいが、夜9時を過ぎ消灯になる。

タオルケットにくるまったシルエットが、小さく細く、泣いているように見える。
私は絶望的に悲しみ、泣きながらエレベーターを降りた。

千恵ちゃんもたかおもヒロミも、皆、同じく、目を真っ赤にし、肩を落としながら帰る。