ラブとおまじない

 
9月8日(日)


土日になると、たくさんのお見舞い客が来てくれる。

夫は、熟睡していて対応できないこともあるが、目を覚ますと、相変わらずのユーモアで気の利いたことを言う。ひとことふたこと、ぽつぽつと。
お見舞い客は、その世界に惹き込まれ、皆、笑顔になる。
なんだか、少し教祖っぽい。


先日、絶望的な事実を言われたけれど、でも、
「修ちゃんに限って、これで終わらせるわけがない」「何か仕出かすんじゃないか」「マジで、奇跡を起こすんじゃないか」「これからじゃないの!」と、
家族も友人達も口々に言い合い、それを本気で思っている。
「だって、修ちゃんだよ!」の一言で、全て片付くような奇跡的な力のある人だから。


***


今朝、メイは、トッチャへのおまじないの練習をする。
人差し指をくるくる回しながら、
「チチンプイプイ の べーーー!」と。
チンプイプイの「プーイ」が「ベーーー!」というメイのオリジナルで、
メイはその「べーーー!」がツボで、言いながらゲラゲラと大ウケしている。


昨日、妹の千恵ちゃんとたかおの入籍にあたり、修ちゃんは渾身の力を振り絞り、婚姻届にサインをした。
皆に背中や腰を支えられながら身体を起こし、もはや目測が全く出来ない状態なので、右手をその枠に合わせてサポートしてもらい、力強く書ききった。
そして、ふたりは、本日婚姻届けを提出した。


兄弟姉妹と私の母、メイがそろい、ムーさんがタイミングよく登場したところで、小さなケーキをカットして、ふたりの入籍を祝う。
夫は、鎮痛剤が効いてしまったのか、よく眠っているが。


ナースセンターの真ん前の重病人部屋はお祝い会場に。
お花を飾り、ケーキを振る舞い、ホワイトアルバムをBGMに、幸せムードに談笑する。
仲良し看護士のWさんも何事かと顔を出し、お祝いの声をかけてくれる。


皆でワイワイと騒いでいるのに、夫は依然として目を覚まさない。
そのうち、メイが、今朝練習してきた
「チチンプイプイ の べーーー!」のおまじないを連呼する。
メイはどんどん調子を上げてきて、部屋中に響き渡るような大声で何度も叫ぶ。

それでも、夫は眠ったままで、私とメイと母は一足先に帰った。



その後の帰宅途中、修ちゃんが突然目を覚まし、
シュークリームを食べているとか、コーヒーを飲んでいるとか、カツサンドを食べているとか、「まいう〜」と言ってるとか、証拠写真付きで送られてくる。

千恵ちゃんとたかおのお祝会場は、修ちゃんの復活祭みたいになっているようだ。


おそらく、メイの「チチンプイプイのべー」おまじないが効いたか、
あるいは、千恵&たかおのラブラブパワーが効いたか、だろう。


やっぱり、修ちゃんはやってくれる男だ。